最近、山友にたぶらかされて勧められてスプリットボードを導入しました。
理由はシンプル。シフトビンディングの山スキーで雪山に登る友人と、ペースを合わせるためです。


本来なら山スキーを導入するのが筋なのでしょうが、残念ながら私はスキーが滑れず、スノーボードしかできません。そんな私が辿り着いた「次善策」、それがスプリットボードでした。
導入にあたって色々と調べましたが、スプリットボードって、情報が少なくてとっつきにくくないですか?。そんなわけで、導入に至る流れと、その後の「トホホ」な後日談について備忘録的に書き留めていきたいと思います。
1. そもそも、スプリットボードとはなんぞ?
スノーボードを縦に分割(スプリット)して、スキー形状にトランスフォームさせることにより、山スキーのように「シール」を貼って歩行することができるスノーボードのことです。
現状、企業体力のある大手メーカーから出ていることが多い印象です。
・王道・メジャー系:Burton, K2, オガサカ, ロシニョール, サロモン, Capitaなど
・意識高いBC勢:GENTEMSTICK, TJ BRAND, Cardiff, Amplid, KORUAなど
・マニアック・専門系:・G3、Weston等々…
そして、とにかく値段が高い。
日本のスキーメーカーの雄、オガサカの FACETは税込価格で203,500円。20万超えの男気プライスです。
その他のメーカーも概ね10~25万円程度。とりあえずお試しで使ってみたいなら、メルカリ等で程度の良さそうな中古を探すのがお勧めです。今回、私もそうしました。
2. 規格の壁:バインディングの規格と中古購入の注意点
スプリットボード最大の参入障壁、それがバインディングの「規格」です。
現在流通しているものは、大きく分けて「Spark R&D」、「Karakoram」、「Union」の3種類。他にもPLUMやPhantomなどのマニアックなブランドがありますが、初心者は一旦忘れてOK。この3つの群から選ぶことになります。
すごーく乱暴に言うと、
- 「Spark R&D」→軽めでお値段そこそこ。皆使っているのでトラブル時に対応しやすい。業界のスタンダード。
- 「Karakoram」→高い!メカメカしくてかっこいい!重め。ボードのソリッド良好。
- 「Union」→安い!クランポン付けるのメンドくね?
って印象(素人の感想です)。
今回私が購入した商品に付いていたのはスパークR&D・T1システムでした。
ヒールリフター(登坂時にかかとを上げる針金)に、横からストックで操作できる耳たぶ(Whammy Bar-ワミーバー)」が付いていなかったことから2017~2021頃に発売された商品です。
これから購入を検討されている方は、可能であればつま先の台座(ツーリングブラケット)のブッシュが、従来の金属(真鍮)から、グラファイトプラスチックに更新されたものを購入するのが耐久性の面からおすすめです。
| 規格システム名 | 板側のパーツ (インターフェース) | 特徴互換性の注意点 | 中古購入時の チェックポイント |
| Spark R&D T1 (スパークR&D) | Pucks (パック) | 現在の世界標準。 構造がシンプルでトラブルに強い。 | 「T1」表記があるか確認。旧テスラとはブラケットが不適合。 |
| Burton Hitchhiker (ヒッチハイカー) | Pucks (パック) | 中身はSpark R&D製。Burtonの(Channel)と相性抜群。 | スパーク社のT1パーツと互換性あり。現行モデルか確認。それ以外の旧モデルはピン式の可能性あり。 |
| Voile (ボレー) | Pucks (パック) | 最も歴史ある(古い)規格。伝統的なピン固定方式が主流。 | 金属ピンが付属しているか。最新のピンレス(テスラ)とは別物。 |
| Karakoram (カラコラム) | 専用インターフェース Ride Mode 3.0 | 滑走時の一体感に定評あり。独自のレバー固定システム。 | 「Prime」以降のモデルか。旧型(SL以前)は現行パーツと不適合。メルカリ等でバラ売りのパーツを集める際は、全てが『Ride Mode 3.0』の刻印(または形状)で統一されているか確認が必要。 |
| Union (ユニオン) | 専用ディスク | 独自の回転固定方式。通常のバインに近い乗り味。 | ピンやディスクなど、専用の付属品が全て揃っているか。 |
3. シール?ステッカーじゃないよ。「アザラシ」だよ!
スプリットボード初心者が最初に勘違いする言葉、それが「シール」です。
「ソールに貼るからステッカー的なシールなんだろう」と思っていたのですが、実はスペルは Seal(アザラシ)。
かつて北欧の先住民族たちが、スキーの裏にアザラシの毛皮を貼り付けて登っていたことに由来します。
アザラシの毛には「一定方向に寝ている」という特性があり、
・前方向:毛並みに沿ってスムーズに滑る
・後ろ方向:逆立った毛が雪に突き刺さり、ブレーキ(グリップ)がかかる
という、先人の知恵をそのまま継承したハイテクな「毛皮」なんです。ちなみにステッカーのSealとは語源が全く別物だそうで、つまり、全く別のルーツから来た言葉が、たまたま同じ形になったものなんですね。……紛らわしい!
貼り付け面は「超強力なガムテープ」!
このシール、滑る時は剥がしてザックにしまうのですが、屋外での作業がなかなかの無理ゲーです。
・風が吹き荒れる極寒の雪山で
・10kg超のザックを背負った状態で
・チートシートから剥がした途端に暴れ狂うシールを、雪やゴミが入らないよう迅速に板に貼る!
この儀式を経験して初めて、「いや、なかなか難しい道具だわ」と実感しました。天気がいい時にはなんてことのない作業なんですけどね~。
購入した板に付属してきたシールは、Black Diamond「アセンション」でした。ナイロン100%の剛毛で滑走性は控えめですが、その分グリップ力はいい感じ。初心者の私をスリップの恐怖から救ってくれました。
4. 急斜面の保険:スキーアイゼン(クランポン)の重要性
ちなみに、シールがあればどこでも登れると思ったら大間違いです。
早朝の凍結した斜面や、風に叩かれたカチカチの雪面では、シールも無力。ただ表面をツルツル滑るだけの、文字通り「ただの布」に成り下がります。


特に重い装備を背負っている場合、重心が後ろにあるので、斜度が上がれば上がるほど重力はあなたを谷底へ引きずり込もうとします。もし一歩踏み出した足がスリップすれば、重いザックに振られて滑落……という最悪のシナリオが脳裏をよぎります。
ここで登場するのが、金属の爪を持つスキーアイゼン(クランポン・クトー)です。

私はSpark R&Dの Ibex(アイベックス)をザックのすぐ出せる場所に入れ、すぐに取り出せるようにしています。ガリガリの斜面に直面したとき、「ガリッ」と氷を噛む音ほど心強いものはありません。
クランポンは踏み込むたびにアルミの爪が氷を「ガシッ!」と噛んでトラクションを稼いでくれる、凍った雪原でなくてはならない装備になります。マジで安心感が違います。ってことで、
結論:使わないかもしれないが、持たない選択肢はない!となるんですが、ここで注意すべきは、サイズ(幅)です。
自分の板の「センター幅」に合わせてクランポンのサイズ(WideやRegularなど)を選ぶ必要があります。特に、自分の板のウエスト幅より狭いクランポンを買ってしまうと、物理的に板を跨げず、ただの「重り」を持ち歩くことになります。
| サイズ (Ibex) | 内幅 (実測) | 推奨ウエスト幅 | 互換性・備考 |
| Narrow (ナロー) | 約 128mm | 25cm以下 | 細めの板、女性用 |
| Regular (レギュラー) | 約 138mm | 25~26cm | 標準的なサイズ |
| Wide (ワイド) | 約 148mm | 26cm以上 | ワイドボード向け |
- Spark R&D用 (Ibex): T1システムにスライドさせるだけで装着可能。
めっちゃシンプルで良い製品だと思う。バインを装着したままでも屈めば装着できます。
- Karakoram用: 専用のレバー操作で固定するタイプ。一度バインからブーツを外さないと付けられないのが微妙に感じる。こんだけメカメカしいんだからもっとスマートにくっつけられないもんですかね。
- Union用: 独自の装着方法・・・。Karakoramもそうなんですが、バイン側にクトーをくっつけるので、歩こうとして踵を上げるとアイゼンが効かなくなるのがなんか嫌ですね。
道具は揃った。だが本当の戦いはここからだ!
さて、これでようやく「登るための道具」は揃いました。しかし、スプリットボードの真の恐ろしさは、道具を揃えた後に待っている「現場でのトランスフォーム(変形作業)」と、予期せぬ「トラブル」にありました。
事前の入念なチェック、ロックタイト(ネジ緩み止め剤)での全てのネジの固定……。万全を期したはずの初陣を待っていたのは、過酷な雪山の洗礼でした。
次回の「ここが変だよスプリットボード」は、
・「このネジを六角(アーレンキー)にしたのは誰だあっ!?」と、
・「消えたネジ。雪山でネジを探す……(無理無理ィッ!)」
の2本立てでお送りしたいと思います笑。
スプリットボードは、買ってからが本当の戦いでした……。
(つづく)

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