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雪崩リスクを学ぶ!AvaSARベーシックコース体験記

スノーボード
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毎年、雪山に登ってバックカントリースノーボードに勤しんでいます。もちろん三種の神器(ビーコン、ショベル、プローブ)を装備し登山届を出して臨んでいますが、体系立てた知識としての雪崩対策について学ぶ機会がありませんでした。

今回、雪山での安全を守るために必要な雪崩の捜索救助についての知識と技術を学べる「AvaSAR(アバサー)「ベーシックコース」に参加してきました。雪崩リスク管理の基礎を学ぶこの講座に参加した体験を通じて感じたことや学んだ内容をご紹介していきます。

はじめに‐AvaSARベーシックコースとは

AvaSAR(アバサー)ベーシックコースとは、雪崩事故防止研究会(ASSH‐アッシュ)が主催する雪崩災害についての基礎的な知識と技術を学ぶプログラムの一つです。

AvaSAR(Avalanche Search & Rescue‐雪崩時の捜索と救助)と銘打ってる通り、雪崩時の捜索と救助に重点を起き、エビデンスに基づく最良の雪崩レスキュー技術を提供することにより、日本の雪崩レスキュー技術を国際基準のレベルに引き上げることを目的としています。

対象は一般向けの講習会として広く参加者 を募り、講習をおこなうとしていますが、HPでは対象をスキーヤー&スノーボーダーから山岳ガイド、スキー&スノーボードガイド、スキーパトロール、 公的機関の救助隊隊員、医師、看護師等の医療従事者としています。ちなみに私が参加した日の参加者は「スノーボードの上級者でこれから本格的にバックカントリーを始めようとしている人」がほとんどでした。

受講の動機

冬山は美しい自然が広がる一方、雪崩という大きな危険が潜んでいます。特に近年のアウトドアブームにインバウンド人気も重なり、雪崩事故のニュースを耳にすることも増えてきました。そんな中、自分自身や仲間の安全を守るためには、正しい知識と技術が必要だと常々感じていました。AvaSARベーシックコースは、初心者でも基礎から学べる内容になっていると聞き、「これなら自分にも理解できそう!」と思い参加を決めました。

この記事では、私が受講した体験を通じて感じたことや学んだ内容についてご紹介していきます。

コース内容

【定 員】18名となっていましたが、当日の参加者は4名。講師の2名を含め6名で開催されました。

【受講料】一般 ¥16,000 学生 ¥13,000

【講 師】主任講師 笹倉孝昭さん(南東北雪崩研究会会員)の予定でしたが、

栃木県山岳スポーツクライミング協会遭難対策委員長さんと

栃木県山岳スポーツクライミング協会の指導委員長さんが代役として講習を行ってくださいました。

【レンタル装備】

  •  雪崩トランシーバー ¥1,000
  •  プローブ ¥500
  •  シャベル ¥500

当日受講前に現金で支払う。お釣りが出ないよう事前にしっかり準備していきましょう!

【コース概要ーAvaSAR(アバサー) Basicコース】
雪崩トランシーバーを用いた捜索救助方法の基本を学ぶためのコースです。基本知識の講義を受け、雪崩トランシーバーの使用方法と捜索の基本、プロービングの基本、シャベリングの基本の実習を行ないました。総合的な実習として雪崩事故を想定したシナリオトレーニングを複数回実施しました。

※ログロールやログリフトなどの実演も行ったことから、おそらくベーシックコース+(プラス)の内容も含まれていたものと思われます。

【持ち物】

[必須装備]

  • 「増補改訂版雪崩教本」(山と溪谷社、2022) 本体¥1,300(税込¥1,430)※当日会場で販売。お釣りが出ないよう事前にしっかり準備していきましょう!
  • 雪崩トランシーバー(デジタル 3 本アンテナ、マーク機能付き)

※ビーコンのこと。そもそもBeacon(ビーコン)は、一定の時間間隔で無線で信号を発する装置を指し、数十メートル以内での通信を可能にする装置を指します。航空・船舶のためのナビゲーションや遭難信号、道路交通、ウェブビーコンなどさまざまな場所で活用されますが、日本のBC界隈ではその端末を指して用いられることが多いです。英語圏では「アバランチトランシーバー」や「トランシーバー」。フランスなどでは「アルバ」と呼ぶことが多いそうです。アフリカでバイク全般を「ホンダ」と呼ぶみたいなやつですね笑。何はともあれ「色んな呼び名があるんだな」って知っておくことが重要です。

  • シャベル

※金属製、シャフトが伸縮性型。できればUIAA(国際山岳連盟)規格準拠のもの。

  • プローブ 

※最低240cm必要。できればUIAA(国際山岳連盟)規格準拠のもの。

  • 筆記用具
  • 経度、緯度を把握できる機器(スマートフォン、GPS など。使用しませんでした
  • ヘッドライト (使いませんでした
  • 屋外で長時間行動できる服装(防寒着、防寒帽子、手袋など)
  • 予備の防寒着、帽子、手袋 
  • ザック(30 ㍑以上)
  • 行動食(昼食の時間は無いので片手で食べられるものがオススメ) 
  • 飲み物

[持っているなら]

  • ツエルト (持っていったが使わなかった
  • マット (使ったけど無くても良かった
  • ソフトボトル(ナルゲン、プラティパス。500ml 以上。使わなかった
  • 保温水筒(使ったけど無くても良かった
  • 使い捨てカイロ 2 個以上(桐灰マグマを推奨。使わなかった)

[食事]

  • 昼食時間は特に設けられていません。講義実技の合間に摂ることになります。プログラムの合間に5~10分程度のトイレ休憩があり、その合間でちょこちょこ行動食を食べるみたいな形で進んでいきます。片手で持って食べられる「手返しの良い行動食」を持っていきましょう。

【講習プログラム】

8:30:集合・受付・レンタル装備貸し出し

8:50:開講(主催者挨拶、講師紹介)

9:00〜11:00:講義

 雪崩発生区域の名称、埋没可能性区域の推測、雪崩発生時の対処法、雪崩の危険要素、埋没時間と生存率、雪崩トランシーバーの仕組み、雪崩トランシーバーの電波特性、電磁波干渉、自動復帰モード、グループチェック、雪崩トランシーバーの捜索(エアポートアプローチ:シグナルサーチ、コースサーチ、ファインサーチ)、プローブ捜索の基礎 (ピンポインティング、スパイラルプロービングなど)、シャベリング基礎、メンタルマップ基礎

午前はスライド見ながらの座学

 11:30〜16:30 実技

 グループチェック、ショベリング、救助者への処置(保温・加温)、プロービングの基礎、エアポートアプローチと捜索の基礎、複数埋没の捜索、深い埋没の捜索、シナリオトレーニング

エアポートアプローチを用いた捜索
ショベリングの実技

16:30〜17:00:振り返り、講評・総括、閉会挨拶、閉講

上記のスケジュール通り進んでいきましたが「結構カツカツ」でした笑。

スムーズな進行のために受講者も協力できるところは協力して効率的に進めていきたいですね

具体的な学びー手順編

このセクションは私個人の備忘録的な側面の大きなものになりますので読み飛ばしても大丈夫です!

アルバのEVO3やEVO4を使用している方は、この講習に先だって専用のストラップを購入することをオススメしておきます。エアポートアプローチを行う際、初期バージョンのストラップだとスムースに行うのが難しかったです。

こちらが購入時に付いてくるストラップ。
こちらを追加購入するのがオススメ!
  • ビーコンを使用した埋没者の捜索についての手順
  1. なにはともあれシグナルサーチ

とにかくビーコンを補足する!耳と目で!

耳元にビーコンを当てながら捜索範囲をジグザグに駆けて回る。EVO4の初期ストラップは、この操作をする際に腰元のストラップが邪魔をしてきます。

自分のビーコンの電波特性知っておくと良い(真円か楕円か)。

ビーコンを補足した時点で「シグナル!!」と叫ぶ。

ビーコンを補足したらエアポートアプローチを用いた捜索へ移行する。

  1. コース(粗い)サーチ

エアポートアプローチで!

10mの時点で「テン!!」と叫ぶ。

ここで一呼吸置いて、より正確にゆっくり進む。

  1. ファイン(細かい)サーチ

3mの時点で「スリー!!」と叫ぶ。(またはスリー・ゼロ)

ビーコンを膝の位置まで下げて固定しながら捜索する。この操作をする際、EVO4の初期ストラップは首にかけている側のストラップが邪魔をしてきます。

捜索者以外のメンバーはスリー!の声が聞こえたらショベルやプローブを組み立て、捜索者が即座にプロービングできるよう準備しておく。

プローブの展開にあたっては斜面の下の方にプローブ先端を投げるとスムーズに展開できる。メーカーにより様々な展開方法があるので、グループのメンバーで貸し借りして一度使用方法を確認しておくと良いかも。

必要に応じてファインサーチ・イン・クロスを実施。※初心者は省いても良い。

大事なことは正確に・素早くビーコンの指し示す最小値を見つける事!!

ビーコンによって捜索位置が絞り込めたらプロービングへ移行。

  • プローブによる埋没位置の特定
  1. 目印となる起点に雪を詰めたプローブの外袋等を置き、中心点の目安とする。
  2. 『ファインサーチ実施者が』『25cm間隔で』『スパイラルプロービングを実施』。
  3. 山側に向かって立ち、プローブは常に斜面に垂直に刺す。

深そうな埋没では捜索者以外のメンバーは斜面下側を掘り出して雪の排出路を確保しておく方が良い場合もある。

  1. 要救助者にプローブ先端が当たった感触を感じたら『ヒット!!』と叫び、続けてプローブの深度を『120cm!!(例)と声に出して読む。
  2. その際、プローブは絶対に抜かない!
  • ショベリングについて
  1. スノーコンベアベルトショベリングで掘り下げる
  2. 掘る際はショベルを振り上げない!他の人に怪我をさせない!
  3. 2~4分おきに先頭を交代する
  4. V字カット法、ブロックカット、ハーフムーンカットによる効率的な掘り出しを意識する。
  5. 26°より緩やかな斜面になるよう掘り進める。
  6. 手が空いているメンバーは出来ることを探す。(お湯を沸かして湯たんぽの準備をする。掘削交代のタイムキーパーや記録をする。他のメンバーの装備を確認し、ツェルトを持っているか?エマージェンシーシートを持っているか等を確認?ヘリ搬送が想定される場合には進入路の作成と周辺の環境整備が必要?等々)
  7. 身体の一部が見えても絶対に引っ張り出さない。
  8. 外気に晒されないよう、体表を覆う。
  9. 可能ならば能動的加温を行う。

等など、実際に体験してみなければ分からないことだらけで非常に中身の濃い講習でした。

具体的な学びー道具編

BCで使用する道具に関しても多くの知見が得られました。

ビーコンについては

Kei
Kei

3アンテナ式のデジタルビーコンなら、そんなに大した違いは無いんでしょ?

なんて思ってたんですが、これが大間違いであると感じました。

具体的には埋没者を探す際のナビの正確さと速さ、画面表示のみやすさがマムートのバリボックスの最新版(S2)が頭ひとつ抜けていたのが印象的でした。あとコイツなんか喋ります。捜索時に。

マムート<br>「バリーボックスS2」ちゃん
マムート
「バリーボックスS2」ちゃん

「雪面を視覚的に確認しながら捜索を開始してください」
「移動速度を上げてください」
「移動速度を落としてください」
「デバイスを膝の高さで持ち、矢印を辿ってください」
「プローブによる作業を開始してください」

ちょっと捜索時のフォローしてくれる感じで好印象でした。

他にも、雪崩トランシーバーの機能について、マーキング機能の有無とマーキングできる人数の違い、シグナルサプレッション機能の有無、グループチェックモードの有無、受信距離とアンテナによる受信特性(フラックスラインによる混乱のしやすさ)、電源オンオフの方法、バッテリー寿命、受信・捜索モードの切り替え方法、モーションセンサーによる自動復帰モードの有無。操作の簡易さ等々が次回の購入に当たっての確認ポイントになりそう。こちらについては長くなりそうなので価格も調べてまた別の記事でまとめていきたいと思います。

ショベルの選択についても金属製のシャフトを持ち、伸縮するシャフトのもの。できればUIAA(国際山岳連盟)規格準拠のものなど講師の方々の実際の救助活動の経験に基づいた貴重なアドバイスを多く提供してくださいました。

ショベルを試す機会もそうそう無いので色々使わせていただきましたが、やはり講師のお二人の使用しているショベルは使い勝手がまるで別物。体感1.5倍程度の効率で掘ることができました。

ちなみに講師のお二人が使用していたショベルはこちら。

 Mさん…ORTOVOX(オルトボックス)のKodiak(コディアック)3.1

Uさん…G3のスぺードテックショベル(Dグリップ)

ちなみに私が使用しているのはarva アルバ レース ショベル(Tグリップ)

公称300gを謳っていますが・・・
実測334gとまぁ軽い。けどちょっと誤差ァ・・・。

はっきり言って上記2つのショベルに比べると圧倒的な掘削性能の差を感じました。勝っている性能は軽量性のみですが、これを狙って購入したものなので致し方なし。次回アドバンスに参加する機会があったら以前使っていた重い方のショベルを持っていこうと思います。

実際に機器を使用しながらの訓練は、非常に実践的で学びが多かったです。

注意点ー雪崩予防に関する情報はかなりあっさりめ

今回のコースは、AvaSAR(Avalanche Search & Rescue‐雪崩時の捜索と救助)という名称のとおり、雪崩発生時の対応に重点が置かれていましたので、雪崩に遭遇しないための予防策や、危険を事前に察知する方法については、あまり触れられませんでした。

BCに入るに当たっては具体的には以下のような内容が必要になるでしょう。

  • 雪崩が起こりやすい地形や気象条件の見極め方
  • 雪の状態を観察し雪質を評価する技術。
  • ピットチェックを含む積雪の安定性評価技術
  • 安全なルート選択の方法

これらのリスクアセスメントについての知識は、別途他の講習や書籍で補完する必要があります。

まとめ:AvaSARベーシックコースを受講して得たものと今後の課題

今回のコースでは、雪崩時の捜索と救助における知識と技術を体系的に習得することができました。しかし、雪崩を防ぐための知識や技術については、さらなる学習が必要だと感じましたので、こちらに関してはまた別の講習会に参加して知識と技術を習得し、雪山での総合的な安全管理能力を高めていきたいと思います!

この記事が、AvaSARベーシックコースに興味を持つ方々や、雪山活動の安全に関心がある方々の参考になれば幸いです。

余談

ちなみにASSHのyoutubeチャンネルで見られる動画はバックカントリー愛好者必見の動画があります。有名なので見たことある人も多いかもしれませんが、OutflowGREENCLOTHING を経営するプロスノーボーダーの西山勇さんが裏天狗で雪崩に遭遇・救出された際の映像です。スラロームプロービングによる世界初の生存救出の事例です。

カー団地世代にはお馴染みの渋谷謙さんも一緒だったんですねー。居合わせたガイド陣含めすごいメンツが揃った救出劇です。まだ見ていない方はぜひご確認ください!

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