以前の記事でも書きましたが、日帰り~2泊程度の登山の際はジマービルト(Zimmer Built)の『パイカパック(Pika Pack)HDバージョン』を使用しています。
こいつに辿り着くまでにいくつものULザックを乗り継いできたのですが、その一つが今回の記事でご紹介するZpacksの「Nero」でした。
最近は使う頻度が減っているのですが、先日、尾瀬のハイキングで久しぶりに使ってみて、改めて面白いザックだと思いましたのでレビューしていきたいと思います。
Zpacks「Nero」とは?
Zpacksは、アメリカのフロリダ州ウェストメルボルンに拠点を置くガレージブランドです。
超軽量なアウトドアギアの製造を得意とし、バックパックやテントなど、軽量性と耐久性を併せもった製品は多くのハイカーからの支持を集めています。
そんなZpacksが発売する38Lのフレームレスパック。それが「Nero」です。
Nero 38Lの基本スペック
重量: 303g (10.7oz)、シットパッド28g(1.0oz)含まず。
ちなみに私の個体は実重量282g。手持ちのテント泊用ザック中最軽量です。
てか38L相当で280gのザックは多分こいつしか無いと思います。知っている人いたら教えて下さい!
本体寸法:5.5インチ×12インチ×23インチ(14 cm×30 cm×59 cm)
容量:38L(本体25L、両サイドポケット2.5L、センターポケット8L)
素材:3.1oz/sqyd(オンス/平方ヤード)DCF Hybrid(ダイニーマ複合生地ハイブリッド)
Nero 38Lの特徴と他の手持ちのザックとの比較
- 幅広のチェストハーネスによる良好な肩当たり
クッション性に優れた幅広のチェストハーネスは背負い心地の改善に寄与するだけでなく、特徴的な見た目を演出しています。
- ロールトップはサイドストラップで固定
ロールトップをサイドのストラップで止めるデザインはあまり見かけないデザインです。ここは山と道「MINI」やジマービルト「パイクパック」のような『中央1本留め』の方が楽ちんで好みです。
ちょっと面白い構造として、サイドのストラップはコードアジャスターを使って好みの場所に付け替えることが可能です。
日帰りの時などは体に近い側にストラップを取り付けていた方が、荷物の収まりが良いのですが、テントポールやトレポなど、サイドに長尺物をしまう場合には、背面側に付け替えて長尺物が落下しないようコードを折り返して抑えられるようにできます(購入時はそのようについてます)。
- 素材由来の高い防水性
Neroは防水性に優れたDyneema Composit Fabric(DCF)で作られています。DCFは極めて軽量にもかかわらず、「強靭な引っ張り強度を持ちつつ防水性がある」という、ある意味ULバックパックにとって最良の素材特性を持っています。このバックパックは、ロールトップクロージャーやサイドポケット、メッシュのリアポケットを備え、最大推奨荷重は15〜20ポンド(ざっくり9kgまで)。DCFの特性から、防水性が高いのが特徴です。一応、小穴は開く可能性がありますのでパックライナーも使用しています。
- 高い拡張性
サイドストラップは極小のコードアジャスターでザック本体のコードループに固定されており、好みに応じて任意の場所に付け替えることが可能です。
また、背面にはマットを取り付けられるようにバンジーコードが配されており、私はここに山道のミニマリストパッドを装着しています。
以下の表は私が使用しているテント泊用バックパックの比較表です。詳細はリンクを貼っておくので確認してみてください。
ブランド | zpacks ジーパックス | Zimmer Built ジマービルト | 山と道 | mont-bell モンベル |
モデル | Nero ニーロ | Pika Pack (HD ver.) パイカパック | MINI | バーサライトパック40 |
重量(公称) | 303g※シットパッド28g含めず | 340g | 380g | 710g※現行品は480g |
重量(実測) | 282g | 348g | 383g | 705g |
容量 | 25~38L | 20~35L | 25-30L※Size M | 40L |
材質(主な) | DCFハイブリッド | X-PAC | X-PAC | 30Dナイロンリップストップ |
特徴 | 軽量化に特化したDCF製!ぶっちぎりで軽いです。背面パッド付(使ってない笑)。 そこはかとなく香るアメリカ製品らしいバタ臭さ(褒めてます)。 耐摩耗性の低さから、取り扱いには少し気を使うかも。 ※現在の製品は素材がDCFからUltraに変更になり、引き裂き強度とともに耐摩耗性も大幅に強化されました! お値段も大幅に強化されていますが! | 巨大なメッシュポケットが使いやすい! 細身でシュッとしたフォルム! 吹き流しが長くて容量可変! 充分ULな重量! しかしメッシュポケットのおかげでなんか可愛らしいパッキング姿。 雑に扱えるXpacが良いですね。コスパ最良かも。 デイハイクから2泊程度のテント泊に対応する柔軟な収納力! →「もうコレだけあればいいやん」状態です笑。 | 言わずとしれた国産ULパック。 触ってわかる良い物感。 しかし背面メッシュのあるMINI2の方が使いやすかったですね。 雪山で使うつもりだったがそれには少し容量不足・・・。 メッシュポケット有りの自堕落パッキングに慣れきった私には使いにくいザックに思えてなりませんでした。 そんな理由でお蔵入り中。 | 30Dのナイロン製。テロンテロンなのでパッキング性能に少しクセがある。 半透明で少し透けてるのでそこも詰め込むものに気を使うかも。 基本は何らかのマットを中に収納してフレームに使う人が多い印象です。 こちらもさすがのモンベル品質。ですが気を付けてパッキングしないとかっこよく収納できません。 そんな理由でお蔵入り中。 |
価格 | $189.00(当時)→$249.00 今は¥60,500(‼️)程度 ※素材がUltraに変更→高価に! | \29,700 | ¥ 32,000 ~ ¥36,000 | \10,900 →\14,300 2022にモデルチェンジ。 安い‼️ |
本体寸法 | 高さ59cm 幅30cm 厚み14cm | 高さ61~71cm※吹き流しで可変 幅25cm 厚み14cm | 高さ55~72cm※吹き流しで可変 幅30cm(トップ)24cm(ボトム) 厚み13cm | 高さ63cm 幅30cm 厚み22cm |
本体寸法から計算した メイン気室の容量 | 25L弱 | 21~25L弱 | 19~23L弱 | 41L強 |
ボトム下部からショルダー ハーネス付け根までの長さ | 50cm | 43cm | 40cm | 50cm |
良い点 | とにかくイケメン | メッシュポケットが神 吹き流し長くて大容量 | 背負い心地が最良 | 一昔前のUL系の雰囲気 |
イマイチな点 | 背負心地が悪い。 | 特になし | 非防水 背汗かくと内部に貫通する。 容量あまり入らない。 | 非防水 詰め込みにくいペラペラ生地! 今となっては重い重量 |
※高さ(H)幅(W)奥行き(D)をセンチメートル単位で測り、H×W×D/1000で計算しています。本来であればSTM F2153-07みたいな方法で容量を比較できるようにするべきなんでしょうが、これだとメッシュポケットとサイドポケットの容量が測定できないんですよね~。
セルフカスタムしました
といっても、大きくはいじっていません。
- 背面パッドは山と道の「ミニマリストパッド」へ変更
背面に配したバンジーコードで付属のシットパッドを背面パッド代わりに装着できる機能があるんですが、シットパッドがペラペラ&サイズが小さくて使いにくいのでお蔵入りに。代わりに山と道のミニマリストパッドを装着しています。
- 不要なバンジーコードを省いたら意外な軽量化に?
その際、背面のバンジーコードも無駄に長くて「こんな長さいらんやろ」って感じだったので必要十分な量を残してカットしています。
また、一応ウェストベルトも付けられますが、ULスタイルなので無しで運用しています。
公式重量は303gですが、いつものごとく自分なりにカスタムして使いやすくした結果、私が使用しているNEROの実重量は約282g(!!)で、完全にアタックザックレベルの重量となっています。
Nero(38L)の小さいモデル、SubNero(サブニーロ) 30 Lの重量が247gなんですが、私のNeroが282gですから、たった35gしか違わないんですね。
ここら辺の超超軽量なバックパックになってくると、バンジーコードやそれに付属するコードアジャスターの重さが馬鹿にならない重量物になってくるってことでしょう。
使用頻度が減った理由
手持ちのテント泊用ザックの中で最軽量のNeroですが、何度か使っているうちに気になるところが出てきました。それが以下に述べる項目です。
- DCFの扱いにやや気を使う
全ファブリックの中でも最強に近い引っ張り強度を誇るDCFですが、耐摩耗性においては少し「脆い」印象をうけます。
岩稜帯での岩との擦れや下においた時の小さな石などとの摩擦にめっぽう弱く、比較的容易に穴が空いてしまう感じです。私の使用方法が荒っぽいのもあるんでしょうが。
しかし、X-PACのザックならこんな心配もなくガンガン使えます。値段的にも荒っぽく使っても精神衛生上問題ない値段ですしね笑。ギアの取り扱いに関して余計なリソースを使いたくないんですよね。体験もスポイルされますし。
- 生地の張りがなく、パッキングに気を使う
もう一点が、X-PACに比べて生地に張りがなく、パッキングの際に隙間をしっかり埋めてカッチリしたパッキングを心がけないといい感じにパッキングできないところです。
「じゃあ、毎回気を付けてしっかりパッキングすりゃいいじゃん」って話だとは思うんですが、毎回意識的にしっかりパッキングするのは意外と骨が折れるんですよね。これも「余計なリソース使ってる」感があって少し微妙に感じていました。
- 吹き流し部分が短く、実際のパッキング容量が少ない
これも他のザックとの比較で感じた感覚ですが、Neroは吹き流しがメッチャ短いので、容量の融通が効きにくいんで\。背面のメッシュポケットで融通を利かす構造になっています。
ULザックは、ロールトップクロージャーの製品が多く、吹き流しの長さで容量を稼いでいる製品が多いのですが、NEROは吹き流し部分がかなり短いため、他のUSザックと比べて容量が少なく感じます。体感では35リットルのパイカパックよりも少なめに感じますので、32〜33リットル程度の容量だと考えています。
上記の表だとメイン気室容量は25L弱になっていますが、体感的にはメイン気室自体もパイカパックよりも入らないイメージです。
- ロールトップクロージャーの入り口がベルクロなため、フリース等が引っかかる
他のザックでは、スナップボタンで留めたり、巾着式になっていたりするトップ部分ですが、NEROはトップ部分がベルクロになっています。そのため、テント場での防寒用に持ってきたフリースや、使い込んでけば立ってきたダイベックソフトのドライバッグ等がこのベルクロに引っかかります。
なんでこんな構造にしたんでしょう?メリットを感じず、むしろデメリットとしか思えません。
テント泊時のブースト用にアドリフトのシーツなどを使う人もいるでしょうが、、引っかかってピリング(引きつれ)なんて起こしたら結構ショックですよね?ここは固めのポリエチレンシートをトップ部分に入れ込むだけで良かったのになー。と思います。
- 背負い心地が悪い。
これについては、背面調等の個人差があるので、単純に比較はできませんが、吹き流しが短く、ストラップのついている位置もやや上目についていることから、どうしても重心が体幹から離れる構造になっています。
また、Neroは荷物を詰めたときの形がいまいちなんです。他のULザックと同じような構造なのに、なぜか下膨れの形状になるんです。
下膨れ形状になるため、重心が下部に偏るのと、吹き流しが短いため、上部に重量物を入れて肩で背負うことができず、結果としてザックの重心が体幹重心から離れた位置になるような構造になってしまっています。
背負ってる重量としては7〜8キロ程度なので、そこまで気にはなりませんが、パイカパックやMINIと比べると背負い心地が劣る。と言うのが率直な感想です。
特に山道のMINIに関してはボトムをスリムに、トップにボリュームを持たせることによって『肩で背負う』構造になっています。ここは山と道の哲学をと日本人の細かさを感じるところで高く評価しています。
- 垂直方向の寸法が短い。
これについては、背負い心地とも関連してくるのですが、縦方向の長さが短いため、ザックの重心が低くなってしまい、「肩で背負う」のが難しい構造になっています。
また縦方向の寸法の短さゆえに、サーマレストのZライトソルや、ローカススギアのCP3などの伸縮式のトレッキングポールは、ザックから突き出してしまい、見た目に不格好なだけでなく、樹林帯や岩場での活動中にそれらを引っ掛けるリスクがあります。
対策としてパッキングの方法を考えたり、マットをクローズドセルマットからインフルダブルマットに変えたりする必要がありました。トレッキングポールに関しては、モンベルのULフォールディングトレッキングポール113に変更することで、しまい寸法を短縮しています。見た目はローカスギアCP3の方が好みなんですけどね。
尾瀬ハイキングでの再評価
結構ボロクソに悪い点を書きましたが、尾瀬のテント泊のようなゆるふわキャンプに使用するザックとしては、最良の選択肢の1つになると思います。
今回久々に使ってみて見直した点を共有していきます。
- 圧倒的な軽量性
これはトータルでの話になってしまいますが、容量があまり入らないため自然と内容を厳選するようになります。結果、ザック自体の軽量性もありますが、全体として荷物が少なくなり、軽量な荷物で軽快に歩くことができました。
- おしゃれな外観。
山と道や、HMGのような「スマートなかっこよさ」ではなく、パタゴニア製品のようなこなれた感じの「ダサかっこよさ」があります。
これは雰囲気的なものなので、伝わる人にしか伝わらないと思いますが、『俺が考えた最強のハイキング用バックパック』を大雑把なアメリカ人が作るとこんな形になる。って製品だと思います。(決して悪口ではありません笑)。
パッキングしたときに下膨れになる形もそうですし、チェストストラップの付け根部分の処理も現代的なバックパックの作りから考えるととてもおおらかに見えます。しかし、そのような細部の処理から全体的なイメージができています。
なかなかこの感じが出せるザックは無い。というか狙って作れる味では無いので好きな人にはたまらないザックだと思います。
- 使い勝手は、一般的なULザック並み
DCFを使った300グラム以下の重量のバックパックと聞くと、昔からのULハイカーはの方からは「だいぶ癖がありそうだなぁ」・「使いにくいだろうなぁ」などと思われるかもしれませんが、Neroはそんな予想を裏切り、拍子抜けするほど使いやすいバックパックです。
ある程度適当にパッキングしても何とかなるロールトップクロージャーにリアのメッシュポケット、両サイドのボトルポケット等ULザックのアイコニックなデザインが全て盛り込まれながら200g代の驚異的な軽量性を誇ります。もうこの一点だけでも使ってみる価値のある製品だと思います。
まとめ
結構ボロクソにレビューしましたが、たまに使ってみると『なんかカッコいい』のもまた本音なんですよね笑
背負う荷物を軽くすれば背負い心地の悪さも気になりませんし、尾瀬のテント泊のような設備が整った条件の良いテント場で、あまり強度の高くないスケジュールの山行で使うのであればベストな選択になりうるザックです。
その意味ではアルパイン的な使い方ではなく、やはりロングトレイルハイキングのような用途に特化したザックなんでしょうね。
思えば、今回の尾瀬ハイキングも初日の夜半から早朝まで雨が降っていたため燧ヶ岳にアタックしなかったのが好印象に繋がったのかもしれません。御池からの周回でしたら普通のハイキング程度の強度ですしね。
総評としては「色々とクセはあるけどグッドルッキンなULザックだよ!ピンときたら買いかもね!』ってまとめになります笑。
恐らくこれは頭でアレコレ考えて使うザックじゃないです。アメ車です。
「カッケェー!乗りてぇー‼︎(背負いたい‼︎)』って人が選ぶザックだと思う笑
逆に理屈っぽい人には全く合わないザックと思いますので購入の際は参考にしてみて下さい。
ということでZpacks「Nero」のレビューでした。
Don’t think! Feel!
ちなみに
ちなみにですが、「将来的に2泊以上のテント泊縦走登山をしたい」という人には今回紹介したザックの中からなら圧倒的にジマービルトのパイカパックをオススメしておきます。
今はX‐PACからECOPAKに材質が変わっていますが、以前と同様「パリッ」とした張りがある頑丈な生地でパッキングも楽ちん。吹き流しが長いので荷物の増減に柔軟に対応でき、かつ安い(¥29,700)!
今現在Zpacks「Nero」は材質がDCF HybridからUltra200(新しい生地。有能)に変わり、耐摩耗性が大幅に向上‼️合わせてお値段も大幅に向上‼️しています笑。流石にこれに6Kは出せん笑。
お金に余裕がある人にはTRAILS(トレイルス)のULTRALIGHT HIKER(ウルトラライトハイカー)30Lをオススメしておきます。ULTRA200を使った30L (本体+ポケット)の超軽量ザック。重量公称でなんと268g(‼️)。
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